NSKK 日本聖公会 東京教区
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ピ ア ノ 

 

主教 アンデレ 大畑 喜道



  私は音楽は好きですが、楽器となるとまったく才能がないようです。子供のころ、ピアノの練習を嫌々させられたからでしょうか。最近、音楽用語の本を読んでいて、改めて気づいたことがあります。ピアノというのは弱くとか優しくとか訳される強弱記号ですが、ただ単に弱く弾くとか、強く大きい音を出すとかということではなく、優しく美しい、繊細さが要求される。それによって一つの曲が大きな広がりを持ってくるのです。大きい音だけでは一方的な騒音にしかならないでしょう。
  さて今度は楽器のピアノの歴史を考えるとそんなに古い楽器ではないようです。ものの本によると1700年代に最初のピアノのようなものが発明されたようです。当時、貴族たちは、自分のために楽器を作らせることが多く、フィレンツェのメディチ家の王子もその一人でした。彼はメディチ家に仕えていたクリストフォリに、チェンバロの改良を依頼しました。その頃、鍵盤楽器はチェンバロが主流でしたが、音が強弱に乏しいのが難点だったのです。クリストフォリはそれを改良し、「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ(ピアノもフォルテも出せるチェンバロ)」を創りだし、それが徐々に改良されて現在の楽器になったようです。そしてこの時、この名前が短縮されて、「ピアノ」と呼ばれるようになりました。省略すらならフォルテでもよかったはずですが、小さな音を大切にしようという神様の大きな計画がそこにあったのかもしれません。この世界はどうしても声の大きい人が勝利する傾向があります。しかし教会はこの世界の中で本当に小さい音しか出せない人の声も大切にしていくことが求められているのではないでしょうか。この世界での小さな声を大切にしていくということは言葉では簡単ですが、実際に実行することは大変なことです。しかしどんなに困難であっても教会はピアノを大切にできるような共同体でありたいと思います。