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労働トラブル Page11
 この人達は様々なトラブルがありますけれども、一番相談にたくさん来るのは労働トラブルです。
賃金が払ってもらえない、それから労災にあったけれども、補償が受けられない、それから突然首になっちゃったということですよね。働いて賃金が払ってもらえないということ、逆から言えば働かせておいて、賃金を払わないというのはこれは犯罪ですよ。どう考えたって悪質な犯罪ですよ。

 ところがやられた被害者の側がですね、このオーバーステイの外国人でありますと、社長に向かって「社長、これ約束が違うよ。」という風に苦情を言うと、社長が「それじゃあ警察呼ぼうか。」と言う。
ですから加害者が警察を呼ぶんです。警察が来ると被害者が捕まるんです。
こんな馬鹿なことはないと思いますね。でも何故そういう事が起こるかというと、賃金未払いというのは労働基準法、労働法に関わるものです。
労働法関係は警察の管轄外で、これに口を出したら警察は違法です。
だから警察を呼んでも、賃金未払いは警察には面倒を見てもらえません。
ところが入管法違反は警察の管轄ですから、警察を呼べば警察が面倒を見てくれるわけです。
で外国人の方が捕まってしまう。そうなっちゃ困るから仕方がないから黙る、こういう事ですね。

 加害者が警察を呼んで被害者が捕まるという風な、そういうおかしな状態というのはあってはならないことです。それで相談に来まして私達が相談に乗っていく。
労働法規というのは、労働基準法第三条で「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として賃金その他の労働条件について差別的扱いをしてはならない。
」と規定している。国籍で労働者を差別してはならない、とここにはっきり書いてあるんですよ。
これがあるおかげで今まで助かってきたんですよ。我々の救援が成り立ってきたんですよ。

 当初はこの労働基準法があるにもかかわらず、入管法には通報義務というのがあるんです。
ですから労基署に「賃金未払いがありました。」という風に持っていく。
そうすると労基署は労働基準法上差別ができませんから、それで事情を聞いて雇い主に「お金を払え。」とこういう風に言う。場合によっては取り戻してくれることもあるんです。
ところが同時にこの労働基準監督官は公務員ですから、いろんな事を調べてオーバーステイがわかると入管に通報しなきゃならないということになるわけです。
これを杓子定規に解釈しますと賃金未払いを持っていったら、こちらが入管に通報されて捕まっちゃうわけです。ですから労基署が使えなかった。最初の三年間使えなかったんですよ。

 いちばん悩んだのはですね、もう話にもならないんですけれども、労災で人さし指をけがする、で、第1関節の頭半分切った。この半分を超えるか超えないかでもって、労基署に持っていくか持っていかないかを、判断しなきゃならなかった時期があったんです。
それはどういう事かというと、半分以下だとですね、これ指の機能が失われませんから。
ですから障害等級が一三等級位ですよ、指の先がなくなっても。
そうすると補償金がですね、90日分ですから、当時は70万円位なんです。
70万円もらって、通報されちゃったんじゃあ往復の飛行機賃と、それから借金して偽パスポートを買った、そういうものは元が取れないんです。だから、泣き寝入りして働くほかしょうがない。
まあ指一本の頭ぐらい何とか我慢して働くほかしょうがない。

 これに対して第一関節半分過ぎますと、今度は指が曲がらなくなる。用を廃したということになります。等級が二級上がって11等級という形になります。
そうしますとですね、これは補償金が200日分ですから160万円位になる。
160〇万円なら、まあ借金を返していくらか持って帰れるかということで、通報覚悟で労基署へ行こうかという風になるという、誠にもって、非人道的な判断をしなきゃならなかった。
しかも雇い主に住んでる場所が知られている場合、雇い主が労災にしたくないのを、こちらが労災にしますと、この仕返しでもってチクられます。だから、安全のために住居を他に移しておいてから、労災を申請するという風なやり方をしなきゃならなかったとか、そういう事がたくさんあったんです。

 これはおかしいおかしいということを、私達言い続けまして、そして、はっきりと1989年の秋に通達が出まして、通報が行われなくなりました。私達も持っていくときに「今度持っていくケースはオーバーステイなんですけれど、お宅は通報しますか。」という風に監督官に聞くんです。
監督官が「いいえ。私は通報しませんけれども、県の労基局に報告は出します。」県の労基局に連絡して「お宅は通報するんですか。」というと「いいや、うちは通報しません。ただし報告は本省に出します。」と言うんです。で私たちは「ああ、それで結構です。」とこういう風に言うんです。
何故結構かというと、だいたい現場からパーッと通報が行ったらこれはアウトですが、普通、通報は県の労基局がまとめてから地方入管局に行くわけですから、県が通報しなければ通報は行かないのです。それからは軽い怪我でも労災補償が要求できるようになりました。
小さなことですが当事者にとっては大きな変化でした。

 ただバブルの崩壊で人手がいらなくなったらですね、悪質な雇い主は首にするかわりにチクっちゃうらしい。突然、入管が工場にやってきて全部連れて行っちゃうんですね。
それで雇い主も本当は罰金になるはずなんですけれども、まあ罰金の方が軽くて済んじゃう場合もあるものですから、いらなくなった労働力をむしろ入管に送っちゃって、そうして、いなくさせるという風なことが起こるということです。まあそういう労働者としての権利が守られないということが非常に多い。

 それからもう一つ深刻な問題は、保険がないということです。これも厚生省がどういうわけか、えらく法務行政にたいして義理堅くてですね、オーバーステイの人は社会保険にも入れない、国民健康保険にも入れない、生活保護も出しませんという事ですね。病気になって入院しちゃったら、お金が払えないんですよ。普段ちょっと風邪をひいただけでも、ものすごいお金がかかるわけですから、それで、ついつい我慢して悪くしちゃうという状態ですね。
これなんかはね、日本列島の土の上で、何びとで