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日系人問題 Page12
   日系人の問題は、実はオーバーステイと関係がありましてですね、80年代の終わり頃にオーバーステイがどんどん増えていくという傾向になりました。
八九年に法務省はそれを防ごうということで、入管法を厳しくしました。
「不法就労助長罪」という新しい罪名ができて、不法就労の人を雇った日本人も罰せられるという、そういう項目ができました。それから、翌年にかけてちょっと横ばいになったんですね。
増加がちょっと止まったんです。で、法務省は抑止効果が出た、法律を厳しくしたのが効果があったという風に言ったのですが、私達はそれに対して冗談でしょう、原因は違うんじゃないですか、という風に言っていたんですね。

 それは何故かというと、実は、それと相前後して法務省はもう一つ手を打っているんですね。
それは違法の外国人が増えるのが困る。でもバブルの最盛期ですから、外国から労 働力に来てもらわなくてはいけないと。来てもらうについては、合法の人を入れたい。
でもドッと来られても困るから、そこで、南米に移民した日本人の子孫、つまり日系人。
この人達ならば日本人だからという、これこそが血統主義の血の信仰ですよ。
もともと日本人だから日本社会に連れてきても、日本社会の血の純潔性が乱れることはないだろう、という風に考えて日系人を入れることにした。

 一世の子供はまだ日本国籍を保持していますからね、二重国籍を持っているわけですけれども。
その子供つまり一世の孫までは「日本人の配偶者等」という、「等」がつくんで す。この一字がすごく意味を持つんですけど、要するに「子」ですね。その次の世代になると、今度は日本国籍者じゃなくなっちゃいますから、それでその人達は日本人の子孫であることが証明されたら「定住者」というビザで入れる。だから、南米系の「配偶者等」 と「定住者」というのはほとんどが日系人であるわけです。

 この時にですね、約20万人の日系人が導入されました。
しかも日本人が日本に帰ってくるだけだから、何も面倒見なくて良いと考えて、ビザを発給することにした。で1、2年の間に約20万人ドバーッと来ました。

 ところがですね、当時私達は言ってたんですね。高野豆腐を水につけるのと違うよと。
水につければもとの豆腐にもどるというわけじゃないでしょと。もう向こうに住んで二世三世の世代になれば向こうの文化なじんでいる。雨の別れの涙の旅という演歌の世界の人間、湿っぽい世界の人間と、サンバでもってバァーッと踊っちゃう世界の人と全然メンタリテイが違う。
20万人からの人を短期間に他文化間ワープをさせるには、ちゃんと政府同士が相談して、そして向こうの募集体制と準備体制と、こちらに来てその職業斡旋と受け入れ体制をちゃんと手を打ってからやらないと大変なことになるよと言ってたんですけれども、それを何にもやらずに野放しにした。
野放しにするとどういう人達が親切に面倒を見てくれるかというと、もちろんボの字のつく人達が多いんですけれども、まあこの場合、合法ですから必ずしもボの字でなくても良いんです。私のような普通の人間で。

 たとえば、私がひと儲けしてやろうと考えてですね、「渡辺工業」という会社をおっ立てたとします。
机一つ電話一本で、そしてラテンアメリカに行っていい加減な広告を出して給料をうんとあげるからと言ったら、人がドーッと集まって、その人達を連れてきて安いアパートに住ませておいて、で、名だたる一流企業の下請け、孫請けのA製作所ならA 製作所という所に三〇人くらいの人を送り込んでいくのですね。ほかにも何カ所かこれをやる。派遣業です。これは違法です。
それがばれないようにするためには私はA製作所と下請け契約を結ぶわけです。
A製作所の何々工場のこのラインを渡辺工業が請け負います。そこに労働者が行くわけですね。
しかし工場長一人だけが日本人、後はみんな外国人 。渡辺工業の社長の私はどうするかというと一緒に行きません。だって私は工場のことはなんにも分からないんですから。
私は何をやっているかというと昼間はパチンコに行って夜はフィリピンパブで飲んでいる。
仮に100人送り込んだとするとピンハネが1日3千円 ということはない。
もっと多いんですけれども最小限3千円と見積もったって1日30万円ですか。
パチンコしていて1日30万円入ってくるわけですよ。つまりそういう荒稼ぎをしているわけです。
それでバブルの崩壊、人手がいらなくなりました。で元請け大企業が生産調整ということになると、下請けに注文が止まっていく。A製作所も下請けの注文がなくなりましたから、ある日私に突然電話がかかってきて「渡辺さん、あなたんとこの人要らなくなった。来月から要らない。」「あっそうですか」と。
いささかも慌てず社長はその日のうちにみんなに「来月から仕事ないよ」と。「これから二週間のうちにアパート返すから、あなた達は何処へでも行きなさい。」と言いわたして、私はたんまり貯めたお金を持ってフィリピンかどこかへ遊びに行ってしばらくもぐってるわけですよ。放り出された人達は未払い賃金があるかも知れない。あるいはですね、あと次の就職を見つけなきゃならないかも知れない。
けどもう社長は逃げちゃってるからどこにも文句は言えない。

 だいたい93年頃ですね、そういう事で特にペルーの人達が放り出されて路頭に迷う状況になったわけです。
そしてたまたま九州の福岡のカトリック教会の信徒の方が、見るに見かねて、とにかくお金を1万2万あげて助けるというのは、いわゆる物乞いに物をやるようなそういうやり方じゃだめだと。
やっぱり人間なんだから働きたいんだから仕事の斡旋してあげる方がいいと。
ともかくできるだけ仕事の世話してあげる。100人か200人ぐらいの保証人になっちゃった。
保証人になった後万一事故があった時に自分じゃ負いきれないからということでいくらか保証金を積んでもらう。その保証金の扱いを間違えたんですね。
ちゃんとした別口座に入れておけばまだ良かったのに、事務をやっている暇がなくて、たまたまあった自分の銀行口座に振り込んでもらったんで懐に入れたという風に見られちゃったわけですね。

 で、まあそういう事で支援団体逮捕第一号にカトリックの信者の方がなりました。
その方が捕まったときに、私は「ごめんなさいね、私が逮捕一号になるつもりでカラバオの会の代表を引き受けたわけだけれども、でも私の方にこないであなたの方に行っちゃいましたね。」という風に言ったんですけれども。それは私達は初めから運動としてやっていますから、その点十分注意しながら、ひっかけられることをできるだけ少なくするするように気をつけて来ましたけれども、その方は一人で突っ込んじゃったんですね。見るに見かねて。
これはやむを得ないことですけれども、事務のやり方に手抜かりがあったことは否 めない。
そういう事でつけいられたと思いますけれども。まあそういう状態の中でカトリックの人が捕まりました。

 つまり日系人というのはそういう形で非常に無責任に導入されたんですね。
そしてそのために結局非常に苦しんでいくという状態です。しかしバブル崩壊後も人数は減りません。
頑張っています。ともかく一週間に一日でも二日でも食いつなげる限りは食いつないで頑張っています。で家族を呼び寄せて、ですからその後減らずに、今だいたい26万人前後です。
この部分で非常に激しい文化摩擦が起こっています。

 参考書に挙げておきましたつい最近出た西野留美子さん、この人は従軍慰安婦問題でずいぶん頑張ってやってきた女性のジャーナリストですが、この人が最近『エルクラノは何故殺されたのか』(明石書店)という本を出されました。
これは小牧市でエルクラノ君という中学生のペルー人の少年が日本人の、一口で言えば暴走族なんですけれども、青少年グループに袋叩きにされて殴り殺されたんですね。虐殺されました。
一人の人がそうやって虐殺されるという、その背景には、実は突然ワーッとそういう風になったのではなくて、その前から地元にずーっと外国人が増えてどうのこうのという、そういう摩擦があってですね、それがそういう形で噴出しているという事です。

 これは日本の将来を暗示しているんでありまして、このまま行ったら日本中がそういう状態になるだろうと。これからどんどん外国人がまだ増えていく。景気が回復したとかどうとかって言いますけれども、そうなればそうなったで益々外国人は増えていくと。

将来日本では少子化傾向で二〇八〇年頃には人口が半分になるとか、しかも人口の若いところばかり減っていくわけですから上ばっかり増えちゃう。だから社会が成り立っていかない わけですね。
どんなことをしたって外国から労働力に来てもらわなければやっていけない。
そうすると外国人がどんどん増えていくという状態はこれからも進んで行かざるを得ない。
その時に今までのやり方をしていると本当に文化摩擦、民族摩擦というのが殺し合いにまで発展していくという事であります。
 
   
 
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